- 中日春秋
世の中の道は木切れや石ころが多くて、歩くと危ない。だから鹿の皮ですべて覆うのがよいのではないか。そう主張した弟子を釈迦(しゃか)が諭した
▼「すべて覆うのは不可能だろう。ならば人の足を皮で覆ったほうがいい」。釈迦にそんな話があるという。社会の危機管理の要点のような挿話として、宗教評論家ひろさちやさんが著書『仏教とっておきの話366 冬の巻』で紹介している
▼危機の際、社会をそっくりつくり変えるのは困難だ。弊害も怖い。はき物を身に着けるように一人ひとりが自らの身を守る。感染症との闘いにも通じるように思える心構えだ
▼新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府はきょうにも緊急事態宣言を東京都や大阪府などを対象に発令する。都市をそっくり封鎖し、人々の外出を禁止するような欧米のやり方とは異なる。国民一人ひとりが自分と周囲の身を守る行動ができるかに成否はかかっているだろう
▼政府は協力を得るため、現状の認識や見通し、知見などを丁寧に説明する必要がある。人や企業への経済的な支援も欠かせない。都市封鎖でないとはいえ、私権の制限がかかわる宣言でもある。権限の行使には慎重さが求められる
▼路上の危険な木切れや石が時間とともに増えていると実感させられる日々である。今回の緊急事態宣言の対象とはならなかった地域の人々もその歩みを見詰めよう。
中日新聞:中日春秋(朝刊コラム)
今とそんなに変わらないようにも思えますが、法的根拠に基づく「緊急事態宣言」。
・不要不急の外出自粛要請
・学校や映画館、劇場などに使用制限やイベントの中止を要請、中止を指示
・持ち主の同意がなくても土地や建物を使える。医薬品やマスクなどの保管を命じることもできる
こんなことなら、もっと早くから宣言すればよかったのに、そう思えてしまいます。