- 中日春秋
私財をなげうち、武者小路実篤が宮崎県に「新しき村」をつくったのは一九一八年のことだった。生活難が庶民を覆い、米騒動や労働争議が起きていた。人心にも世情にも不安があり、先行きが見通しづらい時代、実篤は「人間らしい生活…を出来るだけやりたい」と書いている
▼農業を中心に支え合いながら暮らす理想郷の創設は、今でいう社会実験であっただろう。村は本体を埼玉県毛呂山町に移し、困難を乗り越えながら続いた。一昨年、創立百年を迎えている
▼現在「村民」は数世帯にまで減っているが、村が歩んだ道は、格差が気になる社会に貴重な示唆を与えるという声もある
▼こちらはトヨタ自動車がつくる“新しき街”である。スマートシティーというそうだが、モノやサービスがつながった便利な街を静岡県裾野市の工場跡地に、ゼロからつくる構想を明らかにした
▼道路網を整備し自動運転や人工知能(AI)、ロボットなどの先端技術も導入する。来年初めにも着工するそうで、当初は住民二千人でスタートするという。見通しづらい自動車会社の将来像を探る社会実験の街となるようだ
▼世の中では、AIの社会進出などに不安の目を向ける人も多い。便利さがこのうえなく向上する社会は、人間らしい生活を充実させてくれるのか、先端技術は理想郷をつくるのか、と街の外から視線が集まりそうである。
中日新聞:中日春秋(朝刊コラム)
こうして始まるんですね。
子供の頃に雑誌で見た、日本の未来予想のイラストのような都市と交通網。
大体は30年後とか50年後でしたが、ほとんどは実現できていますが、宇宙服みたいのを着た人と、移動するチューブの中の乗り物は実現していません。
すべて自動運転になれば、人的なミスによる事故は無くなりそうです。
しかし、趣味としての運転・ドライブはできなくなりますね。