ウルトラマン・セブンは年代から言って、再放送組です。
その後にオンエアで観ていた「帰って来た」や「タロウ」などよりもよく覚えています。
どれくらい再放送を観ていたんでしょうね。
それにしてもつくづく格好良かったのは、セブンのウルトラ警備隊の出動シーンで流れる英語の歌と映像。その曲名を「ULTRA SEVEN」と言い、本日初めて知りました。
<酋長(しゅうちょう)だの土人だの唐手(からて)だの泡盛だのの同義語でも眺めるかのように、世間の偏見達(たち)が眺めるあの僕の国か!>-。山之口貘の詩「会話」。「僕の国」とは山之口の故郷、沖縄である
▼一九三五(昭和十)年発表の作品だが、その二十年後も沖縄への偏見は変わっていなかった。五五年、一人の若者が沖縄から上京する。沖縄出身と言うとけげんな顔をされた。「(沖縄には)土人もいるんでしょうね」と聞かれた。青年は答えた。「僕も土人です」
▼「ウルトラセブン」「帰ってきたウルトラマン」などの脚本家上原正三さんが亡くなった。八十二歳。千本を超える作品。昭和の怪獣少年たちには忘れられぬ大恩人である
▼怪獣ものでありながら描いていたのは自身も味わった偏見や差別への怒りと悲しみだろう。「正義のヒーローより地べたから見上げる怪獣や世をすねた怪人に共感を抱いていた」と言う。怪獣や宇宙人にも事情がある。マイノリティーへの理解と情が作品に重厚さを加え、子どもたちをはっとさせた
▼髪の毛が赤いという理由だけで地球人に迫害されたトーク星人の怒り。上原さんの「300年間の復讐(ふくしゅう)」(「ウルトラセブン」)はボツになっている
▼「…憎しみがトークを鬼にしました。愛して許すことがトークを本当の姿に戻したのです」。アンヌ隊員の最後のセリフ。上原作品の原点だろう。今、見たい。
中日新聞:中日春秋(朝刊コラム)