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「あいつ今何してる?」なんていつも観てないんだけど、先週たまたま観たのが志村けんさんだった。
新型コロナで治療しているニュースがあった後でしたが、まさかこんなことになろうとは。
以前も肺炎を患ったとの話。
高齢の方や基礎疾患の病歴がある方には、やはり怖い新型コロナです。
国民一人一人が「移さない・移らない」気持ちを持って、この国難とも言える非常事態を乗り越えないといけません。
「近々死ぬと分かればこんなにやさしくなれるのに。不思議だもな、人間て……」。井上ひさしさんの戯曲『泣き虫なまいき石川啄木』にこんなせりふがある
▼場面は一九一二(明治四十五)年。啄木の病は既に重く、妻の節子も結核を患っている。啄木の母カツは節子につらく当たってきたが、節子の病の重さを知って、やさしくなる。それを見た啄木のつぶやきである
▼新型コロナウイルスの世界的感染拡大を受けて、米ニューヨークの国連本部で四月二十七日から開催予定だった核拡散防止条約(NPT)再検討会議の延期が決定した。感染リスクを思えば、やむを得ないとはいえ、あのせりふが浮かび、今こそ話し合いの季節ではなかったかとも思う
▼核をめぐる最近の状況は深刻である。米、ロシアの中距離核戦力(INF)全廃条約は両国の対立で昨年失効。新戦略兵器削減条約(新START)も来年で期限切れとなるが、延長の見通しは悪い。再検討会議で「核なき世界」への勢いを取り戻したいところだった
▼深刻な新型コロナだが、見方を変えれば人類全体を結束させる材料になり得るだろう。感染拡大を前にかくもか弱き人の命。それを思えば、核をめぐるいさかいがむなしく、愚かに見えてくるだろう
▼延期は一年程度か。新型コロナに肝を冷やした人類が核問題で互いに「やさしくなれる」ことを期待する。
中日新聞:中日春秋(朝刊コラム)