岐阜市のシリコーン加工メーカー「タナック」が作ったマスクフレーム「マスピタ」。
小林製薬チックなネーミングですが、これが優れもの。
ペーパータオルでもハンカチでも、それなにりのマスクに変身。
5月初旬から個人用も販売され、人気は必至。
使い捨てマスク同様、これも入手困難にならないといいんだけど。
飲むためではない酒を険しい顔でひとふくみするのは、池部良さんだったはずだ。銃弾が残る主人公役の高倉健さんの腕にぶっと吹きつけては、小刀をとる。そんなシーンがたしか映画『昭和残侠伝』にあった。健さんが痛みに歯を食いしばっていた
▼消毒を酒で。西部劇や戦争映画でも似たような場面をよく見た覚えがある。SF小説や歴史文学のひとこまが、次々に現実になるような昨今だが、ここでもまた、現代の世に映画の世界を思わせるような話である。アルコール度数の高い酒が消毒に使えると、厚生労働省が特例として認めたという
▼異例の代用である。もちろん口から吹きつけるわけでも、刃物による荒療治のためでもないのだが、本当に医療機関などで、消毒のための切実な求めがあるのだという
▼すでに酒どころの老舗酒造会社や名のある企業が、消毒用の酒をつくりはじめている。引き合いは、かなりあるそうだ。医療の現場で深刻化する危機の表れであろう
▼医療用のマスクやガウンなどとともに消毒液も底をついている施設は多いという。感染のおそれを感じつつ、節約や使い回しなどで、奮闘している人々の話に胸が詰まる
▼ポリ袋を使ったガウンづくりに取り組む病院もある。手作りした防護服などを寄付する人も多いそうだ。歯を食いしばる人たちが救われ、報われる筋書きを考えなければならない。
中日新聞:中日春秋(朝刊コラム)