明治三十二年、香港からの汽船が横浜に入ってきた。体調を崩した船員がいたが、寄港していた神戸では見逃されている。「ペストじゃないか」。患者をみて、言い当てた若い医師がいた。開国後、伝染病の流行に悩む明治政府は横浜に検疫所を開いた。そこに勤めていた野口英世である。渡辺淳一さんが伝記小説『遠き落日』でその場面をえがいている
▼実際の野口の貢献度には渡辺さんも疑問を呈しているが、この一件はペストの感染拡大を水際で食い止めた成功例として、後世に伝えられることになる。世にまだ知られていなかった二十代前半の野口にとっては、海外で活躍するうえでのきっかけにもなったようである
▼時は流れて、いまなお、ウイルスとの攻防の最前線として、奮闘が繰り広げられている横浜である。三千人以上が乗船する豪華クルーズ船で相次いで新型コロナウイルスの感染者が報告された
▼感染拡大との戦いは過去に比して、厳しさを増しているようである。潜伏期間にも感染すると報告されたことで、これほどの人数に対して、最長二週間の船内待機が求められている
▼高齢の方や持病のある方には過酷さはひとしおであろう。状況を一挙に打開する妙案も見つからないようだ
▼クルーズ船で国々を巡る観光は世界的に人気が高いという。文字どおりの水際での攻防が、重みを増している現代である。
中日新聞:中日春秋(朝刊コラム)
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豪華客船が隔離施設に?
2月にしてもう今年の10大ニュースですね。
by nikki (2020-02-08 23:48)
nikkiさん
両親にこのクルーズ船旅をプレゼントした息子さんのインタビューを聞きましたが、無念そうでした。
by tsun (2020-02-09 15:32)