クリを使った洋菓子のモンブランの姿を思い出していただきたい。その名はアルプス山脈最高峰モンブランに由来するが、形はともかく色は「白い山」にどうも結び付かない。マロンペーストの黄色や茶色が目立って、雪や氷河に覆われた山が想像しにくい
▼なんでも一九〇〇年刊行された料理書「グランド・キュイジーヌ」にはクリのペーストをドーナツ状に絞りだし、その中心に泡立てた生クリームを添えたお菓子をモンブランと紹介しているそうだ。これならば「白い山」と胸を張って言えそうだが、時代の経過とともにその山のお菓子は氷河に見立てた「白」よりも、山肌の「茶」の方が主役になっていったらしい
▼現実の山の方でも大きな変化が起きている。こちらは甘い話ではない。気候変動の影響によってモンブランの氷河が急速に消失しているという。「白」が消えている
▼フランスのマクロン大統領は最近、ふもとのシャモニーを視察し、氷河消失に対抗し、周辺地域の環境保護対策を強める方針を表明した。入山規制なども検討されているという
▼過去三十年の間に数百メートル単位の氷河が消えている。一九一九年にモンブランを撮影した写真と現在の写真の比較を見たが、「白」が明らかに後退している。増え続ける登山客のゴミも問題になっていると聞く
▼対策の成功を祈る。名峰を茶か黒の山とは呼びたくない。
中日新聞:中日春秋(朝刊コラム)
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